マクロ撮影のレンズ選択

マクロ撮影のレンズ選択

カメラのイメージセンサーの解像力

カメラシステム全体の解像力を最後に決めるのは、イメージセンサー(撮像素子)の画素密度になる。ナイキスト限界といって、ほかの性能がどんなに良くても高々この2倍粗い解像力までしか得られない。

解像力は、像面での単位距離あたりの細かさで表現し、一般に1ミリの中に引いた縞の密度(本/mm)であらわす。分解能はその逆数に相当し、識別できる2点間距離(µm)であらわす。ただし、分解能は像面ではなく物体側で表現する。

SONY ミラーレス一眼 α7R II ILCE-7RM2の場合:

  • 素子サイズ 35.9 × 24.0 mm
  • 撮影画素数 7952 × 5304
  • ナイキスト限界 220 /mm
  • 画素サイズ 4.5 µm

iPhone 7の背面カメラのイメージセンサーの場合:

  • 素子サイズ 5.16 mm × 6.25 mm
  • 撮影画素数  4202 × 2268
  • ナイキスト限界 810 /mm
  • 画素サイズ 1.2 µm

ローパスフィルターや画像処理が入るので、実際の画像上の限界はこれよりは低下する。特に、iPhoneでは演算の影響が大きいと思われる。

α7RⅡのナイキスト限界によって決まる解像力は、よくても約100 /mmまでになると考えられる。撮影倍率が1:1(一般的なマクロレンズの最大倍率)なら分解能は10 µm、5倍(キヤノン MP-E65mm F2.8 1-5Xマクロフォトの最大倍率)なら2 µm程度ということになる。すなわち、レンズの光学的な解像力はこれよりよい必要はない。

イメージセンサーの画素サイズは小さければよいというわけではない。画素サイズが小さくなると、画素に当たる光量が低下し、画素にためられる電荷は少なくなる。そのため、感度やダイナミックレンジで不利になる。

ローパスフィルターと画像処理

被写体にカメラに対して縦ないし横の縞模様があり、レンズの分解能がそれを満たし、結像した縞の大きさと画素サイズが近いと、高率でモアレが発生する。

また、モアレに色付きも生じる。これは、カラーのイメージセンサーの場合、ベイヤー配列といって、画素が4つに区画されてRGB各色を捉えているため。RGB各色の位置は画素サイズの半分だけずれているから。この色付きは、モアレだけでなく、明暗の鋭い(つまり画素サイズに近い)境界部にも生じる。これを偽色という。

これを低減するためには、3つの方法がある。

  1. イメージセンサーの画素サイズをレンズの分解能よりも十分に小さくする
  2. カメラ内の画像処理
  3. ローパスフィルターで像を少しだけぼかす

実際のカメラシステムでは、これらをバランスを勘案して設計されている。

ローパスフィルターは、像の細かな部分をぼかす効果をもった光学素子で、カメラ内のコンピュータがやる計算の一部を、光学的に光速でやっていると考えることもできる。解像感が増すとの消費者の期待から、ローパスフィルターのないイメージセンサーが使われることもあるが、画像処理の負担が増し、電力消費が増す、動画の処理が追いつかないので処理を端折る、などのデメリットはあり得る。

ローパスフィルターはイメージセンサー周りの素子の中でも高コストな部材の一つ。カメラによってはローパスフィルターのあるなしの2つのタイプがあるが、ない方が高価。製造・販売上の理由か。

レンズのMTF曲線と解像力

実際には、各社のマクロレンズから適当なレンズを選ぶのが現実的だ。

一般のカメラレンズの性能は、解像力ではなく、MTF曲線で公表されていることが多い。解像度も知りたいときは、『アサヒカメラ』の連載「ニューフェース診断室」から探す。MTF曲線からレンズを選ぶなら、曲線が1の値にできるだけ近いこと、円周方向と放射方向の曲線が揃っていることが重要。実際の撮影距離や撮影倍率に近い条件でのMTF曲線があれば、それを参考にする。

工業用レンズでは解像力が公表されている。たとえば、ミュートロン社の1.0倍のFマウントレンズの場合、550 nmの光の理論分解能が4.3 µmとあり、α7RⅡのナイキスト限界を上回ることがわかる。

かつて存在した、ニコンのウルトラマイクロニッコール55mm F2では、解像度が500 /mmだったという。現在の一眼レフカメラやミラーレスカメラのイメージセンサーでこれを超えるものはない。

キヤノン MP-E65mm F2.8 1-5XマクロフォトのMTR特性図をみよう(下図)。縦軸が縞模様の再現率で、0.8を超えればよく、0.6を超えればまあよい。横軸は像の中心からの距離で、一般的に四隅に近くなると解像力は下がる。この図をみると絞りをF8にして解像力は30本/mm以上はありそう。何倍の図かわからないが、もし1倍とすれば、30µm位の分解能は得られることになる。

作動距離

レンズ先端から被写体までの距離を作動距離という。マクロ撮影では作動距離が短くなりがちで、装置に当たってしまうなど撮影倍率の限界が決まることがある。カタログを見れば最短作動距離が掲載されている。

一般に焦点距離が長い方が、作動距離も長い。ただし、標準レンズの焦点距離を大きく超えると、レンズ設計上、高い解像度は得にくくなり、価格も上がる。レンズが大きくなるので、カメラの保持も大がかりになる。50 mm・100 mm・180 mm付近の3とおりそろっていると、いろいろなものに対応できる。

オートフォーカスは使わないので、マニュアルレンズでもよい。マイクロニッコール55/2.8なら、レンズを逆にとりつけて1:1以上の拡大撮影も可能。

アイキャッチ画像:http://www.publicdomainpictures.net/